車載用アルミ電解コンデンサの最新技術動向

 自動車・車載関連分野では先進運転支援システム(ADAS)に代表される様な機器の高性能化が進展していると共に快適な車内空間を確保すべく搭載部品の省スペース化が進んでおり、コンデンサ単体においても過酷環境への対応や小形化・高容量化が求められている。
 今回は、これらの要求に対応する車載用アルミ電解コンデンサの最新技術動向について解説する。

■アルミ電解コンデンサの定格拡充「UCV/UCHシリーズ」
 小形化の要求に対し当社では小形・高容量のUCMシリーズをラインアップしているが、更なる小形化を実現した「UCVシリーズ」【写真1】を2015年4月に上市し、2017年10月より16V定格を拡充した。本製品は薄手化電解紙、高容量陽極箔および薄手蒸着陰極箔の採用により、現行品に比べワンランク小形化を実現している。サイズ体系はΦ6.3×7.7L〜Φ10×10L、定格電圧範囲16〜35V、静電容量範囲は220〜1,500μFである。
 過酷環境への対応について当社では耐久試験後の低温ESRを規定したUCZシリーズをラインアップしているが、更なる小形・低ESR化を実現した「UCHシリーズ」【写真2】を開発した。本製品は低蒸散性低抵抗電解液の採用や内部仕様の最適化により、Φ6.3×7.7Lにて現行品に比べ、耐久試験後の低温ESRの初期値に対する増加率を75%低減したことを特長としている。2017年10月より25V定格を拡充しており、サイズ体系はΦ6.3×7.7L〜Φ10×10L、定格電圧範囲25〜35V、静電容量範囲は47〜560μFである。
 高密度実装化に伴い製品の小形・高容量化および高性能化の要求が高まっており、今後更なる高スペック化を図っていく。  

低インピーダンス チップ形アルミ電解コンデンサ「UCVシリーズ」

【写真1】低インピーダンス チップ形アルミ電解コンデンサ「UCVシリーズ」

耐久試験後ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ「UCHシリーズ」

【写真2】 耐久試験後ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ「UCHシリーズ」

■導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYAシリーズ」
 自動車に搭載される電子制御ユニット(Electronic Control Unit: ECU)等は高温度環境が想定されるエンジンルーム内へ搭載されることが多く、アルミ電解コンデンサにはこれまで以上に高温度化や長寿命・高リプル対応の要望が高まっている。これらの要求に対応すべく、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYAシリーズ」【写真3】を開発・上市した。(2017年4月)
 GYAシリーズは導電性高分子と電解液を融合したハイブリッド電解質を採用し、独自の導電性高分子形成技術を適用し低ESR性能を実現した。また、導電性高分子に適合した電解液を新開発することにより、導電性高分子の性能を損なうことなく電解液の特長である低漏れ電流性能を達成している。さらに、ドライアップすることのない導電性高分子を採用していることから、高温度下でも長寿命化が可能となる。
 サイズ体系はΦ6.3×5.8L〜Φ10×10L、定格電圧範囲は25〜63V、静電容量範囲は10〜330μFにてラインアップ。耐久性の保証は125℃4,000時間である。
 今後、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの用途が広がり市場は拡大する方向に進むと考えられる。特に自動車市場は堅調に推移しており、自動運転やADAS等が普及することで自動車の電装化、高機能化はますます進んでいく。これらを考慮し、当社では更なる高容量・高耐熱・高耐電圧化製品の開発を進めている。
 また、家電、通信機器、産業機器等の民生市場への対応に向け低圧から中圧までラインアップの拡充を図っていく。

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYAシリーズ」

【写真3】 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYAシリーズ」

■リード線形アルミ電解コンデンサ「UXYシリーズ」
 自動車の電装化、EV/HV(電気自動車/ハイブリッド車)の台頭によりECUが増加し、それに伴い電子部品の数も増加傾向にある。自動車内の各所に配置されるECUはワイヤーハーネスにより結ばれているが、この通信配線の簡素化および制御の高度化のための機電一体化を目的にECUをエンジンルームへ集中する傾向がある。また乗車空間の快適性やトランクルームのスペース確保といったユーザーのニーズに対応するためにもECUをエンジンルームへ移動し、スペースを拡大させる傾向もある。エンジンルームにECUが搭載されるということは高温度に晒されるため、高耐熱性およびエンジンへの直接搭載や機電一体化の流れから高耐振動性が必要である。この高温度・高耐振動性要求に対して「UXYシリーズ」【写真4】を開発・上市した(2018年1月)。

耐振動構造を有するリード線形アルミ電解コンデンサ「UXYシリーズ」

【写真4】耐振動構造を有するリード線形アルミ電解コンデンサ「UXYシリーズ」

 アルミ電解コンデンサの耐振動性を考えた際の不具合モードとしては、外部端子や内部リードの破断がある。外部端子の破断に関しては、アルミ電解コンデンサ自体を筐体やポッティング等により固定することで対策が可能である。しかし、内部リードの破断に関してはアルミ電解コンデンサ自体への対策が必要である。内部リードの破断の原因については、アルミ電解コンデンサの製造上、素子をケースに挿入し封止するため素子径はケース内径よりも小さく設計されており、素子とケース内壁の間にはスペースが存在する。そのために、振動下では素子がそのスペース分ケース内で揺れるため、リードへの疲労が蓄積し破断に至る。このスペースを何らかの方法でなくすことで、振動下での素子揺れを抑制し破断を回避できると考え、独自のスリット(溝入り)ケースを開発した。【図1】に現行品と「UXYシリーズ」の構造比較を示す。

【図1】現行品とUXYシリーズの構造比較

現行品とUXYシリーズの構造比較


 スリットケースの内部はケース中心付近からケース底側に架けて凸形状を有することにより現行品と比べると素子とケース内壁の間にあるスペースを大幅に低減した構造にしている。これにより内部素子の揺れを現行品と比べ大幅に抑制させたことで、高耐振動性を実現している。一方、中心付近からケース開口部に向けては現行同様の内径を確保しているため今までと変わらない素子挿入性を備えている。そのため、現行の製造工程のままで生産が可能である。
 このスリットケースの技術ポイントであるスリット本数の設計はシミュレーション技術を活用し行った。物を固定する場合、3本固定が一般的であることから、3本、そしてその倍数である6本、9本以上での素子揺れに対する端子部へのストレスを解析した。その結果、6本以上になると大きな差異がないことが検証でき、スリット本数は6本以上と定めたものの、ケースの加工を考慮した場合、9本以上は安定性を欠くという懸念があった。このような結果からスリットの本数は6本と定めている。シミュレーション結果は【図2】に示す。実際の振動試験結果は【表1】に示すとおりである。



【図2】シミュレーション結果(Φ18×40L想定の素子に加速度392m/s2を与えた場合)

シミュレーション結果(Φ18×40L想定の素子に加速度392m/s<sup>2</sup>を与えた場合)

【表1】振動試験結果

振動試験結果

※試験は同一製品にてX方向、Y方向、Z方向の順で実施。

 この「UXYシリーズ」の仕様について以下に示す。ケースサイズΦ18×31.5L、Φ18×40L、カテゴリ温度範囲−40〜135℃、耐久性3,000時間、定格電圧範囲25〜50V、定格静電容量2,300〜11,000μF。耐振動性能は、周波数10〜2,000Hz、振幅または加速度は全振幅1.5oまたは392m/s2(40G)のいずれか緩い方、掃引速度0.5オクターブ/分、振動方向と時間はX、Y、Z各方向を2時間の合計6時間(固定具にて製品を固定)。
 ユーザーの顕在的要求事項を満足することを目的に「UXYシリーズ」を開発したが、その厳しい要求があってこそ製品の性能を向上させることができた。耐振動性能の要求で最大加速度が厳しい場合がある一方、加速度は比較的緩やかではあるが時間が長い場合もある。ユーザーによってその耐振動要求条件は様々であるが、自動車電装用において耐振動性能が不要になることはない。
 よって、今回の「UXYシリーズ」は規格上40Gと定めているものの、様々な耐振動要求条件には個別対応していき、自動車電装システムの要求に応えていく。
 さらに今後は、特にパワートレイン系ECUにおいて耐振動性能を前提としたアルミ電解コンデンサの更なる高スペック要求(高温度対応、小形化、高リプル対応、低ESR化)にも対応すべく、技術革新を図っていく。

 
ニチコン株式会社
2018年1月18日付 電波新聞掲載
 
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